大阪地方裁判所 昭和23年(ワ)2002号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(判斷)
「更に被告は本件用紙は仙貨紙二号品に該当し、昭和二十二年十月九日物價庁告示第八百四十七号により仙貨紙二号品の卸売業者販売價格は一貫匁につき金二百五十七円五十銭、小売業者販売價格は一貫匁につき金二百九十九円に指定せられ、仙貨紙二号品の一連の重量は四貫五百匁であるから、本件売買代金三十七万四千円は原告の被告に対する販売が小売なりとしても金十四万五千二百六十五円、卸売なりとすれば金十七万七千十二円五十銭を超過しかくの如き多額高率なる公定價格超過取引は物價統制法規及び公序良俗に違反し全部無効であると主張するのでこの点について考えてみると、本件仙貨紙が二号品に該当したることは原告の認めるところであつて原告は被告は本件用紙をその儘他え轉売して利益を得んとするものではなく、需要者としてこれに加工せんとするものであるから本件取引の價格は前記告示所定の小売業者販売價格によるべきものであると主張するが、或る取引が卸売なりや小売なりやを決するに当つては單に需要者に対する販売なりや否やを標準とすべきものではなく取引の相手方が間接消費者(業務用原材料として使用する者或は加工業者)なりや直接且つ最終の消費者なりや取引数量が多量なりや少量なりや、売主が卸売業者なりや小売業者なりや等をも考慮すべきものであつて、今本件についてこれをみると原告は紙類の卸売業者であり、被告が印刷業者であつて印刷用紙として本件仙貨紙を買受けたものであること前認定の通りであつて、これに本件取引の目的たる仙貨紙の数量が百七十連という多量のものである事実を併せ考えると、斯くの如き卸売業者の間接消費者に対する多量の物品の販売は卸売であると認むべきであるから、その販売價格は前記告示によつて指定された卸売業者販売價格によるべきものである。そして仙貨紙二号品の一連の重量が四貫二百匁であることは原告の自認するところであるから前記告示によつて指定された卸売業者販売價格である一貫匁金二百五十九円六十銭をもつて百七十連の價格を算出すれば金十八万五千三百五十四円四十銭となり、又右告示によつて定められた販売條件によれば、前記卸売業者販売價格は卸売業者の店先又は倉庫渡の價格であるから原告が被告方に本件仙貨紙を運搬するに要した費用は右販売價格に加算せられ得べきものであつて、原告本人尋問の結果によれば右費用は金二千円であることを認め得るから、これを加算した金十八万七千三百五十四円四十銭が原告の被告に請求し得べき売買代金であると認めるのを相当とする。從つて本件約定売買代金三十七万四千円は公定價格を金十八万六千六百四十五円六十銭超過すること明かであるが、價格統制法規の目的を達するには斯くの如き契約と雖も敢えてこれを全部無効とする必要なく、右法規によつて統制せられた價格を超過する部分のみを無効とすることをもつて必要且つ十分であるから、本件契約も前記金十八万七千三百五十四円四十銭を超過する部分のみ無効であり、右金額の範囲内においては有効なるものと解さねばならない。又價格統制法規に違反する契約と雖も、相手方の無思慮窮迫に乘じて爲された暴利行爲に非ざる以上直ちに民法第九十條に所謂公の秩序善良の風俗に違背し全部無効であると解し難く、本件契約が右の如き暴利行爲であることを認むべき証拠は存しないから、これを以て公の秩序善良の風俗に違反し全部無効であるとすることはできない。